コラム・エッセイ

イワシのトルネード 田尾和俊(2008年8月8日)

「好きな海中の映像は何か?」と訊かれたら私は迷わず「イワシの大群」と答えるが、そんなことを訊かれることは一生あるまい。一生ないから自分で言うのだが、海のネイチャーもののテレビ番組を見ていると必ずと言っていいほど出てくる、イワシの大群がサメやイルカやカジキに襲われて竜巻のようにうねり回る、あれである。どれくらい好きかというと、家でディスカバリーチャンネルをつけて知人(と言ってもがもううどんの息子・通称ガモムス)の結婚披露宴に出かける準備をしていたらイワシの大群の映像が出てきて、時間がないのにぎりぎりまで見ていたら、あろうことか続いてニシンの大群が竜巻を始めて、「これはイワシをしのぐ迫力やぞ!」と興奮しながらとっさに頭の中で「めったに見られんニシンの大群の竜巻とガモムスの披露宴とどっちが大事や?」と並べて瞬時に「ニシンやろ」と判断して披露宴に遅刻した、というくらい好きだ。会場に入ったら司会の笑福亭小つるさんがすぐにマイクを持ってインタビューに来て、私はさっき見たばかりのニシンのトルネードを熱く語って披露宴のスピーチを終えたという失礼極まりないやつなので真面目な披露宴には呼ばないでください。と、ここまで書いて「イワシではなくニシンの大群の方が好きなのではないか?」という質問が私から出たが、真剣に答えるほどの疑問ではない。

さて、映像ではなく実際に国内で見られる「イワシの竜巻」の最大級のものは、名古屋港水族館であるらしい。情報によると3万匹のイワシが入った巨大水槽があって、毎日12時にエサやりか何かで3万匹のトルネードが見られるらしい。と、ここまで書いて、3万匹のイワシはどうやって数えるのか?「イワシ3万匹納入してくれ」と発注された業者はどうやってその注文に応えるのか?あるいは数でなくて重さで発注を受けたとしても、どうやって調達するのか?その都度海に獲りに行くのか?あるいは巨大水槽にいつも在庫を抱えているのか?あるいは獲ってくるとしても網で上げたらあの文字通り弱い「鰯」を生きたまま3万匹、どうやって上げ、どうやって運ぶのか?…と次々に疑問が浮かび上がってきたが、それらの疑問を解消するためにとりあえず名古屋港水族館に行くことにしたら、出発の1週間前にこの原稿の締め切りだと連絡が来たのでレポートすることができない。いずれにしろ、香川くんだりからわざわざ見に行こうという客を獲得する名古屋港水族館のイワシのトルネード。これぞ遠くから人を呼ぶ「差別化」である。ま、私だけ呼んでるのかもしれんけど(笑)。
(ACT顧問)
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