コラム・エッセイ

名文を読め、見出しから書け、行数を死守せよ。 明石 安哲(2014年1月1日)

ひょんなことから文章入門講座を引き受けた。講座は3回、生徒は20人。人生の大半を原稿を書いて過ごして来たのだから、書き方くらい教えられる人になっていても不思議はないのだが、現実はそうではない。自分で書くことと、それを教えることは、恋愛をすることと、その手引書を書くくらいの隔たりがある。

二つ返事で引き受けて一番にやったことは、古今の名文家は文章についてどんなことを語って来たのかを調べること。さっそく通販サイトで「文章読本」を検索した。すると、あるわあるわ、読むだけで人生が終わってしまいそうなほどある。この分だと恋愛作法を学んでいるうちに適齢期を過ぎてしまいそうだ。どうせ読めないだろうけど、手元にあればひと安心。なので、どんどん注文した。1週間後、机の上には計12冊の「文章読本」が並んだ。もう講座は成功同然。告白を前に恋愛マニュアルに埋まって眠る少年の気分。もうゼッタイ大丈夫。

ところで文章読本というタイトルで手引書を書いたのは、かの文豪谷崎潤一郎が最初だったらしい。よほどインパクトがあったのか、その後、次々に同じタイトルを掲げた手引書が出た。そしてついには斉藤美奈子著『文章読本さん江』(筑摩書房)などという、おちょくったタイトルの解説本まで出る始末だ。

これは文章の手引書ではなく、手引書の手引書である。まず文章読本界の御三家と目されるのが、先述の谷崎に加えて、三島由紀夫『文章読本』、清水幾太郎『論文の書き方』の三冊だとある。とうぜん御三家と来れば、新御三家もある。本多勝一『日本語の作文技術』、丸谷才一『文章読本』、井上ひさし『自家製 文章読本』である。もちろん、みんな買った。2つに分けて積み重ねてもかなりの高さ。これで枕を高くして眠れる。

さあ準備万端、いや、実はちっとも読んでないけど、そんなことはどうでもいい。講座の中身は最初から決まっている。自分にできないことを教えても意味はない。第1回は「名文を読め」。 古来の文章家はみな先達の名文を手本にした。名文を書くには名文を読むこと。模倣こそ正しい第一歩。第2回は「見出しから書け」。メリハリの利いた文章を生み出すための最も簡単で最も難しい技。人の心を惹き付ける言葉を見つけ出す。第3回「行数を死守せよ」。規定の行数に納める努力、つまり削る力こそが文章力を鍛える。この3つが文章上達のすべてだと信じている。でもやっぱり、恋は語るより、する方が楽しい。歌ってなんぼ、踊ってなんぼ、と心得るべし。

アーツカウンシル高松理事長

SNSのログインフォーム
SNS

記事一覧

RSS 2.0 ATOM 0.3
>> RSS、ATOMとは??

ACTスケジュール
入会はこちら
Google

WWW を検索
このサイト内を検索

お問い合わせ先

NPO法人
アーツカウンシル高松

高松市大工町8-1
E-mail:wesayact.t@gmail.com
HP:http://www.act.or.jp/
Copyright©ACT All right reserved.